初任給
「初任給見直しのポイント」1.初任給とは
新卒の初任給は、賃金テーブルを設定するときに起点となります。新卒の採用をしない会社、またはその年に支給しない場合であったとしても初任給について本来は定めておくことが原則です。
2.初任給の水準について
初任給の水準について、公的機関では以下が発表しています。
「規模別・都道府県別初任給/新規学卒者初任給情報」(厚生労働省職業安定局)
「職種別・学歴別・規模別初任給/職種別民間賃金実態調査」(人事院賃金局)
「中小企業の賃金事情」(東京都産業労働局)
3.初任給アップに伴う賃金是正
(1)見直しのポイント
初任給の見直しにあたって重要なことは、応募者が競合する他社と比較して競争力あるかどうかということと、会社内では在籍者とのバランスからみて整合性があるかどうかということです。
後者については、長年新卒採用を行わず、一方で在籍者の賃上げも十分に行ってこなかった企業などでは、ともすれば新卒の新人の方が高い“逆転”もありえるところです。また逆転までいかなくても、経験の差が歴然としているのに賃金差がほとんどないことはよく見受けられることです。本来は新卒職員が入社するするまでに整備しておくことが求められるところです。
とくに高卒と大卒の新卒採用者の双方が存在する場合においては注意が必要です。というのも高卒入職後4年間勤続したときに同じ年齢の大卒職員を迎えることになり、ますが、いうまでもなく高卒4年経過した職員は既にベテランです。大卒入職者に対して日常業務の助言や指導を行うことなどもあり、その際に大卒新人の賃金が高いなどということもありえます。これ自体が誤っているとまではいえませんが、優秀な高卒職員については、人事評価の累積傾向を反映したうえで大卒の新卒入社の職員と同等の水準となるように設定すべきです。
(2)評価査定の反映
とくに優秀な高卒採用者について勤続4年後に大卒の初任給を同等もしくは上回るように設定するためには、評価ルールを見直すことが考えられます。
例えば、これまでの定期昇給が5,000円だったとします。
【例】評価査定が優秀であった場合には、標準評価5,000円に2,000円を加算して7,000円の昇給とする。
(3)昇格昇給
等級制度を導入している場合、高卒が1等級、大卒が2等級からスタートすると設定している会社も多く見受けられますが、1等級から2等級へ昇格する際に定期昇給に加えて昇格昇給(特別昇給)加算して実施するなどの方法も考えられます。例えば以下のとおりです。
【例】1等級から2等級に標準以上の速さで昇格した場合には昇格昇給として基本給に1万円加算する。
(4)ベースアップ
ベースアップ(ベア)は賃金表の書き換えであり、本来は賃金テーブル全体の底上げを指すものです。ベースアップの一番の要因は物価上昇であるといえます。ご承知のように昨今、物価の上昇率が大きくなってきており、これにも関連して最低賃金や初任給も毎年引上げられてきています。
物価の対応だけであれば、本来、ベースアップは“率”で設定するのが適当ですが、“率”の場合には、高賃金者ほど引き上げ額が高くなります。しかしながら、人件費管理のうえで既に賃金水準が高くなっている高年齢者にさらに大きく引き上げることは難しい企業も少なくありません。この場合には、“率”に“額”を組み合わせた上乗せも行われています。
【例】今年度のベースアップは、2%に一律2,000円を加算する。
すなわち、まだ若い低賃金者ほど引き上げ率を高く、高賃金者ほど引き上げ率を低く抑えることになるわけです。
このように、ベースアップとはいっても、単に全体の底上げだけでなく、若い職員への賃金引上げに重点を置いてモデル賃金水準の是正を図ることも行われています。これを単なるベースアップとは区分して「賃金改善」とも言われています。